日本生物地理学会 2004年度大会ミニシンポジウム

次世代にどのような社会を贈るのか?

2004年4月11日(日)15:00-17:00
立教大学8号館 8304号室(〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1)


[趣旨] (森中 定治)

  科学者は,日々学問をし研究を行なって自然の理を少しずつ明らかにし,それ以外の人も,日々働く. 何のためだろうか.むろん自分自身や家族の糧を得,楽しみそして次世代を育てるためである. しかし,それだけではない.私見であるが,日々の営みを通して社会全体が向上する, つまりより人間らしく生きていくことのできる社会にするためという大前提があるように思う. 少なくとも,そのことについて意識にあげてみる時が来ていると考える.

  昨今,大学卒業に際し,職の決まらない学生の比率が著しく上昇し,その最大の原因は不況とデフレであると言われる. 先般,テレビの生番組で,高名な経済学者や経済評論家が集いその解決策について激論が交わされたが, 結論らしいまとめすらできなかった.その道を指し示すべき専門家にして答えの得られない, 先の見えない時代を迎えたといえよう.

  しかし一方で,技術・工学は著しくかつ着実に進展し,人類は様々の場面で強大なパワーをもつに至った. 戦国時代,武士と武士が”やあやあ我こそは”と名乗りあって戦をし,その結果何百人何千人が命を落とした. しかし,100年も経てばおのずと元の賑わいに戻った.なぜ戻り得たのか.人間が生存する基盤, つまり未来の世代までつながる自然環境に対し,有意な影響を及ぼすほどの力をもたなかったからである. 科学・技術が生み出した現代の兵器は,戦国時代と同じくその時代に居合わせた何百人何千人の命を奪う. しかし”国敗れて山河なし”,その地はその後何千年何万年あるいはそれ以上,人の賑わいが戻ることのない死の地となる. 我々は,技術の進展によって”破壊”という言葉の意味が変化していることに意を留め, それに応じた人間に成長していく必要があろう.そのためにこそ,学問と科学が必要なのではないだろうか.

  日本生物地理学会は,生物地理学という原点を尊重しつつ創設者蜂須賀正氏の現代における意味を踏まえ, 著しく発展し多様化した現代生物学に対応し,人類への貢献を最終目的として主に生物学をテーマとする多様な学問・ 研究に応じることのできる学会でありたい.今年度当学会を特徴づけるひとつのイベントとして, 人間あるいは高等動物の特に行動とそれを引き起こす心理上の進化, そして生態とそれを取り巻く自然環境を研究の主対象とされる方をお招きして, 人間社会のあるべき姿についてご自身の構想を,夢を大いに語って頂く意図でこのミニシンポジウムを企画した.

  日本生物地理学会のシンポジウムは”気さく”と”気楽”がモットーである. どうか,リラックスしてお話をお進め頂き,我々もまたリラックスしてお話を拝聴したい.